「まじめろ」のアカウント名で活動する男性(19)は、興奮を抑えられなかった。
動画投稿アプリ「TikTok」を始めてから1カ月ほど。投稿した1本の動画が1日で4千万回再生された。
アカウントのフォロワー数を示す数字が、どんどん更新されていく。あっという間に20万人増え、60万人になった。
5日後、再生回数は9400万回まで到達。爆発的なヒットとなった。
「気分を落ち着かせるのに必死だった」
投稿した動画は、「検証系」と呼ばれるジャンル。水に入れると動物の形をしたスポンジに変形するカプセルを、台所洗剤で満たしたボウルに入れてみるとどうなるのか。実験した様子を1分程度にまとめている。
動画は結果がわかる寸前で終了する。「次回の動画を見たい」という視聴者にフォロワーになってもらう作戦だ。たわいもない動画にも見えるが、とくに海外の視聴者にウケた。
フォロワーは2カ月後、200万人にのぼった。
「ここまでの流れは、本当に完璧で、想像を上回っていた」
盛り上がりに気づいた国内のあるSNSのコンサルタント会社から、動画制作のため数百万円の「経済的支援」をしたいとのオファーがあった。ショート動画をさらに盛り上げてほしい、という趣旨だった。
その支援金で2022年8月、家賃月15万円で東京・世田谷の1DKマンションを借りた。神奈川県内の実家を出て一人暮らしを始め、動画づくりに専念する生活が始まった。
朝7時に起きてから日付が変わるころまで、動画づくりや編集に没頭。2カ月後には、1日15本ペース、月500本ほどの動画を投稿した。
「頑張ればフォロワーは1千万人にだってなる。そうなれば誰かに声をかけられ、もっといっぱいお金も稼げるはず」
そう信じて、寝る間を惜しんで投稿を続けた。
だが、異変は突然やってきた。
フローリングの床に敷いた布団から、起き上がれない。まったく気力が湧かず、じっとしたまま、ただ寝て過ごす。
翌日以降も同じだった。日が高くなってもカーテンは開けられない。暗い部屋で、いまが何時なのかもわからない。自炊もやめ、食事は宅配の牛丼とハンバーガーだけになった。
原因は明らかだった。Tik…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル